わが家には三つほどのビデオ再生機と
たくさんのビデオテープがあった。




特に多いのはディズニーアニメで
勧善懲悪を装い、拝金主義のディズニーが
日本の金を搾取しようと大量に販売したものである。

「白雪姫」「シンデレラ」「リトルマーメイド」「ピーター・パン」「アラジン」「眠れる森の美女」「わんわん物語」


そんなビデオテープと同じぐらいあったのは
レーザーディスクというピザ一枚ぶんぐらいの大きさをした
光ディスクであった。

いまなら、失笑するぐらいかさ張る彼らではあるが、
いまだパソコンや携帯の復旧もしてない当時は
最先端をいく、誰もがうらやむ機械だった。

しかし、そのビデオテープやレーザーディスクは
ほとんど両親が姉に買ったもので、
私がよくそのビデオを試聴していると姉が
「それ、お姉ちゃんのだから、いつかは返してもらうね」
と楽しい時間も興ざめするようなことを言っては咎めた。


*

いまや、「映像」といえばDVDに変わりました。

それだけではありません。
ネットではかつてお宝映像ともされていた映像でさえも
それこそ光を媒介にして無制限に、手軽に、試聴できます。

まるで、それまでの馬鹿みたいにかさ張るビデオテープやレーザーディスクをあざ笑うかのように。


いまや、わが家ではビデオ再生機が一切ありません。

まるで豊田商事のようにがめつく所有権を主張した姉に、
私はケラケラ笑いながら、
「お姉ちゃん、はよビデオ持って帰りなよ。あんたのだろ？」
と言い返すことが出来るのです。

なにを隠そう。

いつか父が私に買ってくれた大切な大切な「千と千尋の神隠し」のDVDを
あの泥棒(姉)は強奪し、奴のアジトに持って帰ったのです。
なんたる罪人。



次世代市場の把握としてDVDは大量に出回りましたが、
その後ろにはDVDの三倍の容量を持つブルーレイが虎視眈々と機を待ちます。

もはや、最近の若い子たちは
ビデオを見るときは巻き戻しが必要なことすら知らないかもしれない。


一番可哀相なのは
先見の明がないくせに欲望だけをまかり通す姉でもなく、
大事な「千と千尋の神隠し」を盗られた私でもなく、
巻き戻しもされず、埃をかぶったビデオテープたちなのです。